介護施設・高齢者向け住宅の基礎知識
知っておきたい老人ホーム・高齢者向け住宅の種類
いざ老人ホーム・高齢者向け住宅を探そうとすると、まずその種類の多さに驚かれるのではないでしょうか。施設を探す際はその種類や特徴を知っておくことが大切です。
これから、主なホームの種類をご紹介します。
目次
公的施設と民間施設の大きな違い
老人ホームは地方自治体や社会福祉法人が設置する 「公的施設」と、民間企業が運営する「民間施設」の大きく2つに分けられます。
公的施設には、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、ケアハウスなどがあります。利用料が比較的低めなうえ、低所得者や生活保護受給者は費用を軽減される制度もあり、収入が少なくても入居できます。
ただし、費用が安いために人気が高くて空きが少なく、標準よりも手厚い介護を望んでも対応してもらえないこともあります。コロナ禍では面会の制限も比較的厳しく、施設内と施設外のガラス越しに短時間のみ許可されることも。面会の多さを希望して民間の有料老人ホームへ移る方もいます。
民間施設とは、民間企業が運営する有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などのこと。公的施設よりも費用が高い傾向ですが、その分、居室や設備、食事や介護サービスなどが充実していて、さまざまな特長のある施設があります。有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅を合わせて24,000施設以上と数も多く、サービスや費用の選択肢の幅が広いため、高級なタイプだけでなく公的施設とあまり変わらない費用で入居できる施設もあります。
手厚い介護が受けられる施設もあれば、ほとんど介護が必要ない自立の方が生活できる施設もあり、自分の状況にあった施設で暮らすことができます。コロナ禍での面会の制限も、新規感染者の少ない時期であればほぼ制限なく面会ができたり、緊急事態宣言の発令中や蔓延防止措置の期間は決められた場所での予約面会や、オンラインの面会ができるなど、柔軟に対応する施設が多くあります。
公的施設の主な種類
重度の要介護者が多い「特別養護老人ホーム」(介護老人福祉施設)
- 対象者
- 原則要介護3以上、原則65歳以上
- 月額利用料
- 10万円前後~
要介護度の重い方が24時間介護を受けながら生活できる老人ホームで、全国に約8,300施設、利用者の居住地が限定される地域密着型を含めると約10,000施設あります(2020年)。所得や要介護度、居室タイプによって決められる居住費・介護費・食費などの利用料が安く、入居一時金も不要のため費用を抑えられます。終の棲家として看取りまで利用できるのが特徴です。居室タイプは多床室や個室のほか、ユニット型個室(リビングを中心に個室を配するタイプ)も増えてきています。しかし費用が安いために入居希望者が多く、ユニット型個室の施設や都市部の施設を中心に空床待ちが多い傾向にあります。
メリット
・入居費用が安く、所得に応じて利用者負担の軽減制度もある。
・24時間、介護が受けられる。
・終の棲家になり得る。
デメリット
・入居待機者数が多く、地域や施設によっては数年待ちになることも。
・原則として要介護度3以上、65歳以上のみ入居できる(やむを得ない事情のある要介護度1、2の方や、特定疾病に認定された40~64歳の方も入居が認められる場合がある)。
・コロナ禍での面会は原則禁止や、厳しい制限がある施設が多い。
在宅復帰を目指す「介護老人保健施設」(老健)
- 対象者
- 原則65歳以上(または特定疾病に認定された40~64歳)、要介護1以上
- 月額利用料
- 10万円前後~
入院治療の必要がない要介護状態の方が在宅復帰を目指し、医療的管理のもとリハビリや身体介護を受ける短期入所施設です。状態を良くして自宅や介護施設へ移ることを目的とするため、入居期間は原則3か月まで(3か月を経過すると入所継続の審査あり)。病院と在宅をつなぐ中間施設としての役割を担うものの、特別養護老人ホームへの入居が認められるまで3か月ごとに施設を移るなどして順番を待つ場所として利用されている側面があります。
メリット
・個々の体の状態に応じたリハビリが受けられる。
・費用が安い。
・入居待ち期間は数か月ほどと特別養護老人ホームに比べて入居しやすい。
デメリット
・入居期間は原則3か月まで。
・要介護1以上のみ入居できる。入居中に要支援になる場合は退去となる
身寄りのない高齢者が入居しやすい「ケアハウス」(軽費老人ホーム C型)
- 対象者
- 原則60歳以上、自立
- 月額利用料
- 9万円前後~
軽費老人ホームの一種で、自立して日常生活を送ることに不安があり、家族の援助を受けることが困難な低所得高齢者が生活する老人ホームです。比較的安い利用料で食事や安否確認などのサービスを受けながら暮らせます。介護が必要になった際は、介護保険で外部の介護サービスを利用しながら生活できます。
また、全国約2,000あるケアハウス(2020年)のうち一部の施設は「特定施設入居者生活介護(特定施設)」の認定を受けた介護型ケアハウスです。特定施設とは、厚労省が定めた基準を満たす介護施設として自治体に事業指定を受けている介護付きホームのこと。介護型ケアハウスでは要支援・要介護高齢者を対象とし、施設のスタッフから介護サービスを受けながら生活ができます。
メリット
・費用が安い。
・原則個室。
デメリット
・施設数が少なく、入居待機者が多い。
・介護度が上がると通所・訪問介護ではケアできなくなったり、費用がかさんだりして退去しなければいけないケースがある。
民間施設の主な種類
24時間介護が受けられる「介護付き有料老人ホーム」
- 対象者
- 原則65歳以上、自立~要介護5(施設により異なる)
- 月額利用料
- 15万円~
24時間介護を受けながら暮らせる老人ホームで、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホームが「介護付き有料老人ホーム」になります。全国にある有料老人ホーム約16,000施設(2020年)のうち、約3割が介護付き有料老人ホームです。
公的施設に比べ費用はかかりますが、その分、介護サービスや設備が充実しています。リハビリに力を入れている、医療ケアが充実している、レクリエーションやイベントが充実しているなど、施設ごとに特長が異なります。
初期費用や月額利用料は公的施設よりも高額な場合が多く、月額利用料のほかに入居一時金が必要な施設もあります。高額な施設では、入居一時金が1億円以上になることも。施設のハード面やサービス面が充実するほど費用が高い傾向にあります。
特定施設の指定を受けると、介護サービスをホームの職員が直接提供して、要介護度に応じた一定の自己負担で包括的な介護サービスを行うため、必要な介護が増えても定額でサービスを受けられるメリットがあります。
メリット
・一定の介護費で24時間介護が受けられる。
・設備や食事、レクリエーションなどのバリエーションが豊富。
・施設の選択肢が広く、入居者の体の状態や予算、希望する生活に合った施設を見つけやすい。
・終の棲家になり得る。
デメリット
・公的施設に比べて費用が高い。
・種類が多い分、自分の希望にあった施設を探すのが難しい。
お元気な方が多い「住宅型有料老人ホーム」
- 対象者
- 原則65歳以上、自立~要介護5(施設により異なる)
- 月額利用料
- 15万円~
有料老人ホームのうち、特定施設の指定を受けていないホームが「住宅型有料老人ホーム」です。介護サービスが必要のない自立の時から入居できるところも多く、いろいろなサービスを利用しながら生活できる施設です。なかには自立向けと要介護者向けに、フロアや棟や建物を分けているところもあり、介護が必要になった時には部屋を移動して生活を続けられる施設もあります。
介護付き有料老人ホームと同じく、施設ごとに特色が違い、入居者の望む生活に合った施設を見つけられます。
介護が必要になった時は、施設が提携する外部の介護サービスを利用して生活を続けることができます。ただし、要介護度が高くなると、必要な介護サービスが増え、介護保険外での介護が必要となり、自費負担が増えることがあります。
メリット
・設備や食事、レクリエーションなどのバリエーションが豊富。
・入居前から依頼している介護事業所やケアマネジャーを継続できることもある。
デメリット
・サービスが充実する施設は費用が高い。
・必要な介護サービスが増えた時に負担が予想より増える可能性がある。
生活支援サービスを受けられる「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」
- 対象者
- 原則60歳以上(要支援・要介護認定を受けている60歳未満も可)、
自立~要介護5(施設により異なる)
- 月額利用料
- 10万円~
高齢者が安心して生活できるよう、バリアフリー設計で、安否確認や生活相談サービスを提供する賃貸住宅が「サービス付き高齢者向け住宅」です。1LDK、2DK、キッチンの有無など施設により間取りはさまざま。サークル活動、外出の付き添いなど、施設によりオプションサービスを提供し、自立した方が中心に生活しています。介護が必要になった際は介護保険で外部の介護サービスを利用します。月額利用料のほかに、敷金など初期費用が必要な施設があります。
メリット
・生活の自由度が高い。ほぼ自炊で生活することも可能。
・イベントやレクリエーション、サークル活動などが盛んな施設もある。
・初期費用が敷金のみの施設もあり、入居時の費用負担が小さい。
デメリット
・介護度が上がり、必要な介護が増えると住み替えをしないといけない場合がある。
介護付き有料老人ホームと同等「サービス付き高齢者向け住宅(特定施設)」
- 対象者
- 原則65歳以上、要支援1~要介護5(施設により異なる)
- 月額利用料
- 15万円~
サ高住の中でも、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた住宅は、介護付き有料老人ホームと同等の施設になります。特長は介護付き有料老人ホームとほぼ同じとなり、介護士や看護師が常駐し、要介護度に応じた一定の介護費で介護サービスを受けながら生活できます。
メリット
・一定の介護費で24時間介護が受けられる。
・設備や食事、レクリエーションなどのバリエーションが豊富。
・施設の選択肢が広く、入居者の体の状態や予算、希望する生活に合った施設を見つけやすい。
・終の棲家になり得る。
デメリット
・公的施設に比べて費用が高い。
・種類が多い分、自分の希望にあった施設を探すのが難しい。
認知症の方が共同生活を送る「グループホーム」(認知症対応型共同生活介護)
- 対象者
- 原則65歳以上、要支援2または要介護1以上
- 月額利用料
- 10万円前後~
認知症のある高齢者が、食事や入浴などの介護や生活援助を受けながら生活する、定員18人以下の小規模な老人ホームです。認知症の専門的なケアを受けながら、料理や洗濯など個々の能力に合った役割を担って利用者が共同で生活をするのが特徴です。地域密着型のサービスのため、施設のある市区町村に住民票があることが条件となります。
費用は有料老人ホームやサ高住よりも低い場合が多くあります。ただし、地域によっては満室が多く、入居待ちとなることもあります。
メリット
・費用が比較的安い。
・認知症の専門的なケアが受けられる。
・住み慣れたエリアで、アットホームな雰囲気の中、生活ができる。
デメリット
・共同生活が苦手な方には不向き。
・施設ごとの定員が少ないため、入居待ちが多い。
・申し込みは住民票があるエリア内の施設に限定。
・介護度が上がると、退去しなければならないケースがある。
自分の所有する住宅として「シニア向け分譲マンション」
- 対象者
- 要件は特になし
- 月額利用料
- 物件により異なる
アクティブシニアをターゲットに、高齢者が生活しやすいようバリアフリーなどの設備が整った分譲住宅です。多くの物件で安否確認サービスやコンシェルジュサービスなどが提供されます。フィットネスやプール、シアタールームなどの設備を整えたり、サークル活動を充実させたりなど、住宅ごとに特色が異なります。介護が必要になった場合は、介護保険で外部の介護サービスを利用します。
メリット
・資産として活用ができる。
・レクリエーションの設備が整った施設が多い。
・生活が自由で、退去を迫られることがない。
デメリット
・富裕層向けの高額物件が多い。
・退去後、売却ができるか不透明。
多くの種類の中から自分に合った老人ホームを選ぶには
主な介護施設の分類だけでもこれだけの種類があり、ほかにも介護医療院、軽費老人ホームA型・B型などこちらでは紹介しきれなかったものもあります。
また、それぞれの種類の中でも、施設により提供しているサービスや料金が異なるのが、施設探しの難しいところです。例えば、地域密着型の施設では入居日までに住民票を移しておけばよい施設もあれば、3か月以上の居住実績が不可欠の施設もあります。要介護1以上を対象にしていても、実際は要介護3以上じゃないと受け入れない施設など、パンフレットや重要事項説明書を見てもわからないこともあります。
どうしてよいかわからない、アドバイスが欲しい…そんな時は、「ハルメク 介護と住まいの相談室」へご相談ください。入居者のご希望などをうかがい、施設をご提案いたします。